2006-03-17

大沢在昌「風化水脈-新宿鮫VIII」

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風化水脈 新宿鮫VIII (光文社文庫)
大沢 在昌
光文社 2006-03-14

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読了。前作『灰夜』から2年余、やっと現在までに書かれた新宿鮫のシリーズが文庫で揃った。今までのシリーズに比べても扱われる事件は地味でアクションシーンも少ない。それでもページをめくるたびに引き込まれ、最後に全ての事柄があるべきところに納まった瞬間には物語としての完成度の高さを感じさせられた。一気に読んでしまった。
面白かった...けれども読み終わって鮫島も年をとったなぁと感じてしまう。初期の頃の鮫島と一緒に新宿を駆け回る臨場感、疾走感は薄れ、鮫島も晶も瑞々しい魅力を失ってしまったように思う。

1作目の『新宿鮫』が出版されて時間軸的に最も新しい『風化水脈』まで、劇中では3年ほどのはずだけど、実際に出版された年を見ると10年以上の年月が流れている。作者もそれだけの年を重ねて、その手から紡ぎだされるキャラクタたちもその年月を受けて変わって行かざるを得ないんだろうか。正直、シリーズのファンとしてはそれが寂しくもある。

ラストはどうにでも持っていけたところだろうけど、1番優しい結末を選んでいる。そんな作者のロマンティストなところはやっぱり好きだな。
これから「新宿鮫」のシリーズは何処へ向かっていくんだろう。

[文庫]

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