2004-06-14

大沢在昌「灰夜-新宿鮫VII」

photo
灰 夜 (光文社文庫)
大沢 在昌
光文社 2004-06-11

by G-Tools

新宿鮫シリーズの文庫新刊が発売されましたよー。
大沢在昌は言わずと知れたベストセラ作家で、現在コンスタントにハードボイルドな作品を書いてくれる数少ない作家の1人です。代表的なシリーズに「新宿鮫シリーズ」「佐久間公シリーズ」「アルバイト探偵シリーズ」など。
この作品も新書ではとっくに出ていましたが読んでないので私的には新刊です。文庫が大好きなんですよ。家にある小説も全部文庫。
執筆された順番としては「風化水脈-新宿鮫8」の方が先のようですが、この作品の方が作中の時間が前なのでナンバも7と打たれ、先に文庫化されたようです。

シリーズ初の新宿が舞台でない新宿鮫。
直接的な暴力の描写は少ないものの"新宿署の鮫島"という肩書きがない、今までの仲間も恋人も出てこないので誰も信じられない という点で緊張感のある展開ですね。
街を描いたハードボイルドと呼ばれたこのシリーズも鮫島を中心とした警察小説へと移行しているのかな。鮫島が夜の街を聞き込み歩くシーンなんかは、最近の「佐久間公」シリーズと被ります。

公安警察時代、鮫島が現在の特異な立場に置かれる契機になる話を冒頭に持ってきている。
そのため警察機構の中での鮫島の戦いが描かれるのかと思ったがそちらは語られずむしろ新宿と切り離されたこともあり、「警官」としてではない「個人」としての鮫島の戦いが描かれるまっさらなアクション小説になっていたな という感想。

今までの人間関係をほとんど考えずに読む事ができるので、鮫島のタフな魅力がより全面に出ていると思う。

終盤、外国の破壊工作員まで出てきてスケールが大きくなりすぎるも、最後は鮫島の手の届く範囲で物語をおさめてくれるのは嬉しい。著者のシリーズは最後には世界規模の秘密情報部員だとかが必ず出てきてしまうので、新宿鮫くらいは市井のヒーローでいて欲しい。

[文庫]

« ルルティア「プロミスト・ランド」 | ホーム | スパロボMX進捗状況其の5»

コメント

コメントする



トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://worthless.sakura.ne.jp/mt/mt-tb.cgi/14