2005-12-26

宮部みゆき「模倣犯」4・5

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模倣犯〈4〉 (新潮文庫)
宮部 みゆき
新潮社 2005-12

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模倣犯〈5〉 (新潮文庫)
宮部 みゆき
新潮社 2005-12

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読了。眠くなるまでと読み始めたら、最後まで読んじゃうというベタなことやってしまった。
5冊読み終わった直後に冗長だとは感じさせず、むしろもっと読みたいと思ったくらい引き込まれる。
1部で被害者の家族の、2部で犯人側の、それぞれの内情を描き、この3部でやっと両者はようやく同じ舞台に上がる。しかし、読者はことの成り行きをただ見守るのみしかできない。

警察は淡々とそして確実に「仕事」をこなしていくし、事件の綻んだ部分も実に淡々と、そして自然に明らかになっていく。唯一、カタルシスを得られるシーンはラスト近くのTVの生放送シーンくらいか。これまでと同じく劇的なことなど全く起きないのが逆に、被害者の家族の悲しみ、加害者の家族の苦しみ、そして自らの犯罪に酔っていた犯人の滑稽さをより強く描き出していく。
配された伏線はこの後の警察の捜査で1つづつ明らかになっていくのだろうけど、それはきっと物語の求めていたこととは別の話なのだろう。

ミステリ的な謎解きとか、真犯人へと迫る警察ドラマとかを排除して、「事件」に関わる人間の心に焦点を置いて描いたところが、実に宮部みゆきさんらしいところだったかなぁ。
ひさびさに読み応えのある小説だった。

[文庫]

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