2006-06-20

米澤穂信「さよなら妖精」

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さよなら妖精 (創元推理文庫)
米澤 穂信
東京創元社 2006-06-10

by G-Tools

読了。ユーゴスラヴィアという異文化から訪れた少女マーヤと主人公を含む高校生たちの出会い、交流、そして別れという2ヵ月の物語。日常の中で、ほんの少し違った目線から投げかけられる疑問がささやかなミステリとして存在していて面白い。そんな優しく暖かな日々も終盤、彼女の故郷で起こる出来事によって風向きを変えていき、祈るような気持ちで読み進めていたけれど...。
ボーイ・ミーツ・ガールな青春物語から、突然その物語の庇護を離れて現実へと向き合わされてしまうことで、どうしようもなくやり場の無力感に苛まれ、そして、その分だけマーヤの言葉1つ1つが読後に深く残る。

つい最近、最後に残ったセルビア・モンテネグロからモンテネグロ共和国が独立を宣言し、ユーゴスラヴィアという国は完全に6つの国へと別れた。W杯のセルビア・モンテネグロ代表の試合で、アナウンサが彼の国にとって最初で最後のW杯になると言っていたのは記憶に新しいところだけど、でもきっとこの小説を読んでいなかったら聞き流していただろうな。
この時期にこの小説を読めたことはとても良かった。

[文庫]

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