2006-09-25
石田衣良「アキハバラ@DEEP」
読了。それぞれに傷を抱えて社会に溶け込めないけど得意分野にはめっぽう強いというオタクたちが秋葉原に集い、ITビジネスの世界で成功を目指す。苦労の末に完成させた「それ」をITの帝王と呼ばれる男に奪われたとき、かれは自分たちの誇りをかけて敢然と立ち向かって行く。という、ジャンルでいけばスペシャリストものになるかな。
前半のメンバ全員が一つのきっかけからそれぞれの傷を認めてまとまり、目標に向かっていくところまではかなり面白く読めたけど、後半のだんだんと現実から飛躍していく内容には疑問符が。
ラストのはげしいアクションシーンにしても痛みや血や汗の臭いはあまり感じず、なんだかRPGのダンジョンをラスボスに向かってズンズンと進んでいくような軽さも感情移入を阻害している。また、秋葉原の描かれ方が生命力の感じられない、とてもプラスチッキーなものなのに少々の違和感を覚えた。特定のポイントやキャラクタは魅力的に描かれているものの、秋葉原という街そのものは生き生きと感じないんだよね。これが作者の感じた秋葉原という街の温度なんだろうか。
昨今の秋葉原を中心としたムーブメントを上手く自分のフィールドで軽く料理したファンタジーって感じです。踏み込めばもっと深くも書けるエピソードがいくらでもあるだろうけど、あくまで勧善懲悪なファンタジーに徹したところが残念。これは秋葉原に行かないような人が読んだほうが面白く読めたかな。
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