2006-01-16
村上春樹「スプートニクの恋人」
読了。ひさびさに読んだ村上春樹さんの本。
物語には主人公である「ぼく」と、ぼくが恋をしている作家志望の風変わりな女性「すみれ」と、すみれが恋をした女性実業家の「ミュウ」の3者しか登場しない。
ラブストーリィのようであり、ヨーロッパを舞台にしたミステリのようであり、ファンタジィのようでもある。ただ、正直ストーリィよりも、シーン毎に生き生きと描き出される多彩な「言葉」が記憶に残る。
物語の中で一貫して描かれていくのは、作者が作中でスプートニクに例えた人の孤独。人がめぐり合って、すれ違い、そして離れていくどうしようもない寂しさ。それでも日常は廻っていく現実。
多くの人が心のどこかに持っている寂寥感みたいなものが、静かに感じらるのは流石に上手いなぁ。
雰囲気がなんとなく演劇的に感じる。
細かく日常を描いている割にはどこか現実感に乏しい世界で繰り広げられる物語が、終盤グっと現実に引き戻されるのは意外だった。最後のシーンは再び現実と幻想の狭間へ行ってしまって余分かなとも思ったけど、お陰で後味悪くなく読めたので作者の心遣いと思っておこうかな。
なんて言うか、読みながら物語にのめり込むよりも自然と内省していくような小説だった。優しくてとても寂しい不思議な感じ。
« 二ノ宮知子「のだめカンタービレ」14巻 | ホーム | 石田衣良「ルージュ・ノワール 赤・黒 池袋ウエストゲートパーク外伝」»
コメント
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://worthless.sakura.ne.jp/mt/mt-tb.cgi/200
コメントする