2005-12-10
宮部みゆき「模倣犯」2・3
読了。2、3巻は2部で、1部の反対側の視点から描かれている。
ある意味、全く予想を裏切らない小説だなと思う。予想もしないような新展開、驚くようなトリック、とかは無い。
ただ淡々と追う警察、追われる犯人、被害者、被害者の家族、巻き込まれた人たち、登場する1人1人までとにかく細かく描写している。
この小説には、ただ1人の主人公というものが存在しない。全員があるときは主人公であり、あるときは傍観者でもある。そういった意味では、この小説の主人公は「事件」なのだろうか。
続きが待ち遠しいぞー。
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2005-12-03
宮部みゆき「模倣犯」1
読書中。単行本の頃から読みたかった宮部みゆきさんの長編がついに文庫化されてた。平台の前を5往復くらいして...結局買っちゃった。
だって5巻分冊ですよ!1巻だけで600ページ弱ありますよ!それが面白いに決まってるんですよ!悩むに決まってるじゃないか。
で、やっぱり100ページくらいで完全に持っていかれちゃった。ドーンと重い感じに。
宮部さんの社会派な小説は『理由』以来かな。複数の視点から、それぞれがリンクするように繋がって1つの事件に向かっていくのはこの人の真骨頂だなぁ。
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2005-12-02
筒井康隆「七瀬ふたたび」
読了。筒井康隆初読み。読んでみたら3部作の2作目だった...orz 昔テレビドラマとかになってたんですよね。知らなかったけど。
人の心が読めるが故に厭世的というか冷めてる七瀬が仲間と出会い、守るべきものと出会い、必死に闘って、それでも異端の能力を持つが故に社会から追われていく。その中で、自らの使命感、正義感のために常に前を向き続ける七瀬の在り方が美しいんですよね。ひたすらにハードで読者を突き放しているというか、七瀬に感情移入すればするほど辛い...。
これが20年以上前に書かれた作品なのが驚き。最初の段階でこれだけ面白いものがあると、後に続く人はハードルが高いわー。
しかし、この作品にはロクな男が出てこないな。作者の自虐なのか、なんかヤなことがあったのか( ;´Д`)
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2005-11-29
吉田修一「パレード」
読了。都内の2LDKマンションで共同生活する男女5人の物語。オムニバス形式で1章づつ、それぞれの視点で書かれている。
読み終わって、兎に角居心地が悪いというか、とても落ち着かない話だ。
登場する4人は、それぞれに好感の持てるキャラクタたちなのに、彼らの暮らす日常、それぞれの関係はひどくいびつで嘘くさい。にもかかわらず、その日常が楽しげで普通に見えてしまうところがとても居心地が悪いんだ。
作者が感じている今の日常に対する違和感をディフォルメして1部屋の中に閉じ込めたみたい。
淡々とした日常の描写の積み重ねから、どこかに向かうストーリーを描く訳でもなく、魅力的な人物像を描く訳でもなく、ただ停滞する「空気」を描いて見せたってのは不思議な小説だな。
衝撃的であろうラストはそれほど「怖い」とは思わなかった。
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2005-11-28
トマス・マロリー「アーサー王の死」
読了。なぜこの本を読んでいるのかというと、Fateをやったからに他ならないのだけど、数々のファンタジーで見る名前が出てきて、なかなか面白かった。ランスロットとかタクティクスオウガのキャラクタの方が先に浮かんでくるし。もっと前に読んでおけばよかったな。
後半は、表題のアーサー王の話と言うよりは、ほぼランスロットの話になってゆくのだけれど、円卓の騎士の勇壮さとともに、ランスロットへの叶わぬ恋に焦がれ死んでしまうエレインとか、天然っぽく悪女なグウィネヴィア王妃とか、周囲の女性たちも魅力的。古典ではあるけれど、短い章がいくつも続く構成と、独特の言い回しが多くある文体は、意外にも小気味よくてリズムよく読めてしまった。
アーサー王をして自らより強いと言わしめたランスロットは、もしサーヴァントとして呼び出されていたら如何ほどに強かったかなー などとくだらないことを考えてみたり。
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2005-11-10
原田宗典「平成トム・ソーヤー」
読了。ヤングガンガンで連載中の『戦線スパイクヒルズ』の原作、なんだけどマンガは未見。
天才的なスリの才能と純情高校生っぽさが同居する主人公の造形は王道だし、ハネるような会話、「計画」に向かって進んでいくスピード感、、迫ってくる受験、社会への反発とか、友情とか、恋とか、実に青春小説していている。
主人公と一緒に、キクチにふにゃふにゃになりながら読み進めていくところは気持ちいいな。キクチかわいいよキクチ...。
後半ストーリーを進めるのに必死になりすぎてキャラクターが描ききれなかったのは惜しいなぁ。スウガクも、ちさと婆さんも唐突に色を失っていくし。あと3割くらい書き足してキャラクタを掘り下げられたらもっと面白くなったのに。
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2005-11-07
荻原浩「コールドゲーム」
読了。高校3年の夏、中学時代のクラスメイトが次々に襲われていく。浮上する犯人は当時クラスぐるみでイジめられていた同級生。当時イジメていた側が今度は自分たちを守るために団結して犯人を捜し始める。
描かれているイジメはかなり陰湿。思いかえせば自分の学生時代にもイジメがなかったとは言い切れない。最もクラス全員で1人を、というよりはボンタンに短ランのヤンキーさんたちが教師と殴り合っているという、いささか牧歌的なものではあったけど。
ついつい主人公の心の動き1つ1つのに昔を重ね合わせて読んでしまう。イジメた者、イジメられた者、傍観した者、4年が経過してそれぞれが「今」考えるイジメについてはかなり書き込まれている。展開もスピーディでミステリとしても読めるし面白い。
が、終盤、重松清っぽい話を期待していたところに投げっぱなしジャーマン気味に話が吹っ飛んでいくのは、いきなり角川ホラー文庫になってどうするのよ、という話である。ベタな結末を期待していたところには少々肩すかし。
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2005-08-24
石田衣良「LAST (ラスト)」
『池袋ウエストゲートパーク』シリーズの作者による、タイトル通り「LAST」をテーマにした連作集。ネタ自体は新聞の三面記事か週刊誌に載った記事の裏側を想像したようでチープ。しかし、それがあまりに日常にありそうな光景だけに、読んでいると足元が液状化していくような不安感に苛まれた。1番好きなのは、食い詰めたカメラマンが児童買春する男を撮影させられる「LAST SHOOT」かな。
崖っぷちな登場人物の追い込まれた果ての瞬間を切り取って描かれているだけあってキレはいい。
新橋駅前のSL広場に立つサラ金の看板持ちの最後の勝負を描いた「LAST BATTLE」なんかは、普段何気なく見ている光景が、1つの大勝負につながる舞台になっていて、その発想力はさすがだなぁ。
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2004-10-12
吉田修一「パーク・ライフ」
短編2作。表題作は日比谷公園を舞台に主人公とたまたま知り合ったヒロインの間を日常にありそうで、それでいて不思議な空気で淡々と描いている。まるで日比谷公園のベンチで主人公が寝ている間に見た夢だったんじゃないかという感じ。発せられる言葉は全て投げっぱなしなんだけどいいの?
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2004-09-25
大崎善生「パイロットフィッシュ」
涼しげな表紙に惹かれて購入。
かつての恋人から19年ぶりにかかってきた電話。そこから思い出される記憶。
空気みたいな小説。回想される青春物語も風俗嬢の今の恋人との話も、サァっと流れていくよう。ただ、冒頭の「人は、一度巡り合った人と二度と別れることはできない。」という一文はふとしたときに思い出すかもしれない。
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